1. 日射(にっしゃ)とは?
日射とは、太陽から地球に届くエネルギーのことです。このエネルギーは電磁波として伝わっており、私たちの目に見える光(可視光線)だけでなく、目に見えない紫外線や赤外線なども含んでいます。
日射は、その届き方によって、以下の3種類に分けられます。
- 直達日射: 太陽から直接地表に届く光です。晴れた日に強く感じる日差しがこれです。
- 天空日射: 大気中の空気の分子や水滴、塵などにぶつかって散乱し、空全体から降り注ぐように地表に届く光です。曇りの日でも明るいのは、この天空日射があるからです。
- 反射日射: 地表面や建物、雪などで反射して地表に届く光です。雪が降った後は周りがとても明るく感じますが、これは雪による反射日射が増加するためです。
私たちが気象などで見る「日射量」は、通常、直達日射と天空日射を合わせた「全天日射」の値です。
2. 日射量に影響する要素
日射量は、以下のような要素によって変化します。
- 太陽の高度: 太陽の高度(地平線からの角度)が高いほど、日射量は多くなります。夏は太陽の高度が高く、冬は低くなります。
- 太陽の方位: 太陽が真南にある時(南中時)に、水平面への日射量は最大となります。
- 天候: 晴れの日は直達日射が多く、曇りの日は天空日射が多くなります。雨や雪の日は、日射量は大幅に減少します。
- 大気の状態: 大気中の水蒸気や塵、雲の量などによって、日射が吸収・散乱される度合いが変わります。
- 緯度: 緯度が低い地域ほど、年間を通して日射量が多くなります。
3. 壁面と水平面の日射量
建物の壁や屋根など、面の傾きによって日射量は異なります。
- 水平面: 太陽が真上に来る時間帯に最大の日射を受けます。
- 壁面: 壁面の方位(東西南北のどの方角を向いているか)によって、日射量のピーク時間や量が変化します。例えば、南向きの壁は冬に多くの日射を受け、夏は比較的少なくなります。
4. 季節による日射量の変化(日本)
日本では四季がはっきりしているため、季節によって日射量が大きく変化します。
- 春: 日照時間が長くなり、日射量も徐々に増加します。
- 夏: 日照時間が最も長く、太陽の高度も高いため、日射量が最大となります。
- 秋: 日照時間が短くなり、日射量も減少していきます。
- 冬: 日照時間が最も短く、太陽の高度も低いため、日射量が最も少なくなります。
5. 日射の調整方法
建物に取り込む日射を調整することは、室内の快適さや冷暖房の効率に大きく影響します。
- 庇や軒: 夏の高い太陽の光を遮り、冬の低い太陽の光を取り込む効果があります。
- ブラインドやカーテン: 室内に取り込む日射量を調整できます。
- 植栽: 夏は木陰を作り、冬は落葉して日を通す落葉樹などを利用することで、日射を調整できます。
- 窓ガラス: Low-Eガラスなどの高機能ガラスを用いることで、日射の透過を制御し、断熱性能を高めます。
- ルーバー: 羽根の角度を調整することで、日射の侵入を制御できます。
- 外付けブラインド: 窓の外側で日射を遮るため、室内への熱の侵入を効果的に抑えます。
6. 日射と建築設計
建築設計では、日射を考慮することで、快適な室内環境を実現し、エネルギー消費を抑えることができます。
- パッシブソーラーデザイン: 日射を暖房や給湯などに有効活用する設計手法です。建物の配置や窓の大きさ、庇の形状などを工夫することで、自然エネルギーを最大限に活用します。
- 日影規制: 周辺の建物への日照を確保するための法規制です。建物の高さや配置などが制限される場合があります。
7. 日射と私たちの生活
日射は、私たちの健康にも影響を与えます。
- ビタミンDの生成: 日光浴によって体内でビタミンDが生成されます。ビタミンDは骨の健康に重要な役割を果たします。
- 体内時計の調整: 日光を浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠のリズムを整える効果があります。